その6:レベルデザイン再考

本来なら各フィールドはどうやって考えたか!ってのがメインで解説していきたい所なんですが、なかなかたどりつきませんね。そんだけ根っこからリメイクできてるってことかしら。よいのかしら。ま、じっくり末永くおつきあいくださいませ。

今回はレベルデザインについて。レベルデザインというと、日本ではまだまだ何かと意識されてないらしいよくわからないデザイン職?俺も正確な意味を理解しているわけではないですが、たぶんマップを作るデザインのこと。マップと言っても見た目とかだけでなく、つながり、ゲームの面白さを引き立てる配置になっているか、一方向からではなくどこから通過しても楽しめるかなどなど、ゲームの楽しく面白くするためのマップ(海外ではレベルというそうな?)をデザインしなさいよということ。
もうちょっと補足すると、マップと言ってもアクションゲームやRPGに限った話ではなく、場所を移しながら展開するアドベンチャーゲームや1画面物のパズルにだってレベルデザインってのは重要。何も説明しなくてもプレーヤーを開発者の意図した道に誘導できているかとか、ストレスを感じない作りになっているかとか。もちろんただ親切すぎるのも問題。適度な難所があり、そこを想定した実力のプレーヤーがストレスがパンパンになるより前にクリアの喜びを与えられるように出来ているかなど。
このように、これらをしっかり考えるにはしっかりした構造のデザインが必要ですよという話。

んで、LA-MULANAのレベルデザインと言ってもそこまで深く考えている物ではないです。少なくともオリジナル版の時はレベルデザインなんてタンゴは聞いたことも無かった。とにかく思いついた物を作り、遊びながら直していくってのを繰り返しただけ。
リメイクするにあたって、オリジナル版から変えすぎてしまっては昔からのファンには不評だろう。オリジナル版の形は残しつつ、ゲーム感が変わったので変えるべき所は変えていくという考えで進めました。

ちょいちょい話題になるのが、LA-MULANAには「親切なレベルデザイン」という考えは入れてないです。スタート地点からして右に行くのか左に行くのか何のガイドも無し。行ける場所も最初から山ほどある。じゃあ何も考えてないかというとさにあらず。プレイを公開してくれている動画なんかを見ると、地上でアタフタ1時間、導きの門で分けもわからず死に続けながら2時間。アンフィスバエナを倒した辺りからは各フィールド1時間ぐらいで回っていくように慣れてきている。LA-MULANAってのはそういうレベルデザインを目指したってわけです。最初からガイド不足の中に放り出し、ゲームのルールや筋道を自分で探してほしいゲームってことです。

実際には、テストプレーヤーを集めていろんな人からの報告を耳にし始めた時に、「もっと親切にした方がいいんじゃないか」という意見は出ました。
まったく知識無しで遊んでもらったプレーヤーが取る行動はまずうろつく子供や女をムチでしばこうとし、壷を壊すことに気づかず、スキャナも買わずに敵の落とす小銭集めに必死になる……。これがWiiっていうプラットフォームで出すゲームとしてはまずいんじゃないか?というわけですな。
さらにその話から発展して「地上を1本道にすれば?」「導きをクリアしないと他のフィールドに行けないようにすれば?」「テントの近くにいくとEnter Here↓って出せば?」なんて意見が飛び交い始めましたが、全部無視しました!やったね!
東京ゲームショウで幾つか試遊に並んだ時に、ほとんどのゲームが冒頭数分感がチュートリアルみたいなのばっかりで、親切すぎることにウンザリしてた時期だったんだな。「自分の体で覚えんかい!」ってね。誤解のないように言っておくと、俺はドSではない!断じて無い!全てのゲームがそうあるべき!などとは思わぬ。ただLA-MULANAってのはそういうゲームだってことだ。実際、NIGOROのゲームでも薔薇と椿なんて1人目の時はマウスのガイドを表示してたりするし。誰にでも気軽に遊んでほしいゲームなら親切で誘導するし、迷って自力で解決してなんぼというゲームなら親切すぎるのは逆効果だと思ったのだな。

とはいえ、オリジナル版の「レトロパソコンユーザーならこんな説明いらんでしょ?」な部分は流石に直さなきゃっていうのは企画当初から出ていたわけで、このへんのさじ加減は難しいし、俺も何でも決めて進めてたわけではなく、みんなの意見から採用したり、遊んだ人の意見や自分で遊んで思ったこととか、そりゃもう開発が終わるまでずっと試行錯誤です。
オリジナル版を遊んだことがある人なら細かい所が変わっていたのがわかるはず。手裏剣を取る所のヒントをくれる骸骨の位置が違ったり、ブーツを取る所が変わってたり、地上のアイテムの値段が違ってたり、導きに入る前の地上でブロックを押せたり。こういうのはテストしながらデバッガーや開発陣から出た意見を取り入れてたりする所ですね。

今でも少し失敗したなぁと思ってるのが長老メール。これはソフトの本数がオリジナル版の半分以下になることから何かしら収集要素みたいなのが欲しいと言うことで出した仕様ですが、初期に出していたメール案よりも大幅に増えて序盤のヒントが追加されてます。
作ってる時は「親切手前のギリギリ」と思って納得してたんですが……。説明しすぎだよなぁ。案の定、長老が多くの人にうざがられてしまっている。すまんな、ジジイ。あれはxelpud mailerを起動しなかったらメール受信音が出ないようにすべきだった。
んー。アクションゲームで操作説明のために強制的にゲームを止めて文章読ませるタイプが嫌いでね。長老メールも「読みたくない人は無視できる、プレイヤーにまかせる」から序盤でこれだけのメールが届くのもまぁアリかな?と思ってしまったのだ。

ちょっとレベルデザインの話からそれてきてしまった。元に戻そう。これを見よ。
LA-MULANA遺跡全体図2009/05/20 ※恐ろしいほどのネタバレです。
LA-MULANAでもっとも重要視したレベルデザインはこれだ。マップ全体で、ドキドキワクワクする場所が片寄ってないか、まんべんなく配置されているか、ダレるところは無いかと言う部分。これも立派なレベルデザインだと思うんだけど、違うんかな。
ゲーム感のところでも触れたけど、聖杯石碑や店、ルームガーダーやガーディアンがいるような重要ポイントの場所を決め、それらをつなぐ所にいろんなイベントを置く。難所、強敵、巨大なオブジェっていう具合に。ゴミゴミした所を抜けるとでっかいオブジェ、広い空間。後半で体力が増えて死ぬことがなくなってきた所で気を抜いた人に襲いかかる即死罠。
さらにリメイク版ではオリジナル版以上に攻略ルートを増やすという狙いもあった。オリジナル版だと封印を解かない限り灼熱洞窟や月光聖殿から双連迷宮に入れなかったのだ。いや、まさかみんなズーにランプ無しで突っ込むとは思ってなかったけども。
太陽神殿ピラミッドからの月光聖殿ルートはゲートを使わずに裏を散策できる隠しルートみたいな感じだが、オリジナル版では発弾筒が無いと行けない場所だったのをいつでもいけるルートにしたら。いや、まさかみんな斧無双するとは思ってなかったけども。

とこのように、あれこれ理想立てて考えても実際遊んでみると想定外な部分が山ほど出るんですなーゲームって。
どうしようもなかった例として地上のマップ。あれはフィールドごとにマップを取るというチュートリアル扱いだったんだけども、スキャナ買ってなかったりゲーム開始直後から長老シカトする人が結構いてチュートリアルになってなかったり、そもそも地図は取りやすいけど取った段階ではグルグルマップを買えてない場合が多くて取ったのにマップが見れない。でもあれは地上で古文書リーダーを買うには一度導きに入ってお金を貯めて買い物するんだよっていう狙いとぶつかるんよね。むしろ地上の地図は取らせずに導きのマップから取らせるようにした方がシステムの説明としてはわかりやすかったかもしれない。

むーんむーん。こうして改めて書き起こしてみるだけでもいろいろ反省点が見つかる。レベルデザインとは難しい物よ。未だに何が正解だったかはわからん。
だけどもー。「何でもかんでも親切にすんなよ。難解を楽しみたいプレーヤーだっているはずだろう」ってのが根底にあったからね。長老も似たようなボヤキをしてるしね。リメイク作業している時はそういうふうな精神状態だったんだろう。
コンシューマーには無い、レトロパソコンゲームにあった独特の楽しさってのがあったと思うんですよ。難解さが心地いいみたいな。ヒドい思いをしたからこそみんなで共通の想い出を持てたりとか。理不尽ってわけではなく、ルールまでも探し出すのが楽しいというかね。
動画配信のコメントなんかを見ると、罠を恐れてびくびくしてる配信主に「調教されてきたw」とか、素敵な罠ポイントに近づいてくるとみんなでニヤニヤ、ひっかかると「プギャーm9(^o^)」とかなっている所を見ると、狙いは間違ってなかったとも思うんだけども、買ったけど序盤で投げ出した人も結構いるだろうなぁ。それもまたゲームの体験の1つだ!とは買った人に言えるわけは無いしね。でも思ってたけども。

いやぁ、ロマンシアって面白いよね。大好き。

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Comments

  1. レベルデザインと聞いて想像するのはゼルダの伝説1やメトロイドです。いやダンジョンがレベルと呼ばれてるからですが。
    やりこむとテクニックでゴリ押せるようになってきて、必需品だけ集めつつめちゃくちゃな手順で遊べるのが良いんですよね。
    ロマンシアはそういう遊びが少なく、進めること自体がやりこみな印象です。当時のアドベンチャーやたけしの挑戦状寄りの。

    月光聖殿や双連迷宮はずいぶん彷徨いました。ズーもランプ無しで頑張って、アンクジュエルはヴィーのを持ってきて・・・。
    マップの出入り口や壊せる壁は見つからない、敵は強い罠は多いで辛い筈なのに、つい何時間もハッスルしてしまいました。

    チュートリアルが少ないアクションゲームは、始めてすぐに暴れられるのが快感です。流石に詰んでしまうのは問題ですが。
    長老のメールは確かに序盤で頻繁に来て(リモコンが)煩かったものの、集めようと色々な事をして楽しめたように感じます。
    今のゲームは電子解説書が増えてきたので、基本の説明なんかは徐々に減っていくのかなと思いますが、どうでしょうね。

    • ならむら says

      ロマンシアは当時プレイしていて、「薬をどう使うかの箱庭パズルゲーム」だと思いました。ドラゴンスレイヤーシリーズ自体がどれもパズルっぽいと思いましたね。
      難解すぎてクリア手順が固定されてしまった感がありますが、天使でクリア、人間のまま地下帝国とか、当時やってはいないけど「もしかしてできるんじゃね?」と思わせる余地と言うか何かが好きでした。

      昔のゲームの場合、計算しつくしたと言うよりは作りこむ要素が今よりもはるかに少ない中で、少ない人間で作る為に全体に目が行き届いていたんじゃないかという気もしますね。
      今、レトロゲームテイストのゲームを作る場合は考えを変えないとなかなかうまくまとまらないと思って作業しました。いろいろと分析されてますからね、レトロゲームって。方法論知った上で独自のものを作らなければならないと言うか、うまくいえませんが。

      その考えで行くと、双連迷宮はやややりすぎだったなと思ってます。広さに対して歩き回る為の目印が少ないと言うか。迷路に凝るあまり、広い場所や目立つオブジェクトが少ないんですよね。Wii版双連迷宮は敵とか博士の強さのバランスが所々「いけるかもしれない?」と思わせるラインだったんでしょうね。だからゲーム序盤でも突っ込む人続出したのか。

      他の人の考えを聞けるのは楽しいですね。これからもスタートすると説明無しで野っぱらに放り出されるゲームを作ります!

  2. 毎度このコラム楽しんで読んでます。
    色々な人の「ゲーム制作時に何を考えて作っていたのか」というのはとても興味深いです。

    今回のテーマの「レベルデザイン」ですが、おれも最初よく分かんなかったですねぇ。
    色々な記事など読んでても、ただのステージ設計でしょ?とか。レベルって言葉、変じゃね?と。

    今は、「レベルデザイン」ってのは、「プレイヤーのスキルレベルの上達に対するゲーム設計」ってことだと解釈してます。
    なので、“レベルデザインをする”ということは、アクションゲームなんかでは主に“「ステージ」や「マップ」の設計をする”ということになり、かつ、“そのステージやマップの登場の順番などの設計をする”ということになるのかと。
    プレイヤーのスキルレベル(もしくは知識レベル)が無理なく上達していくのが「良いレベルデザイン」なんだろうなと。
    ゆえに、「レベル」デザインなんだろうなと。
    単純にステージやマップを考えるのではなく、プレイヤーのスキルや知識の上達ルートを設計し、コントロールするんだろうなと思ってます。

    最初の説明なしでいきなり理不尽に死ぬゲームだとしても、死ぬことで何が悪かったかが分かり、徐々にそのゲームのことを飲み込めればいいのかと思います。
    ただ親切であれば良いというものでもないと思うので。
    「現実のダンジョン探索なんかじゃいくらでも突発死するんだよ!」という、緊迫感などの雰囲気を出したい場合、親切すぎるとそういう効果は無くなりますからね。

    • ならむら says

      レベルデザインのLEVELってのはゲームなんかで言う水準、程度の意味ではなくて、平面・水平などの意味の方みたいです。
      だいたいが3Dゲームが主流になってから生まれた言葉なんで、マップの高低差などをうまくデザインするという意味合いがおおきいみたいです。もちろん、その高低差の変化がゲーム性に影響するタイプのゲームの話でしょうけど。
      んでレベルデザインって言葉が日本で言われるようになると、2Dのゲームでも、「プレイヤーのスキルレベルの上達に対するゲーム設計」てのも含めてしまうようになってしまったって所でしょうか。自分もアサシンクリードの開発者が使っているのを見て覚えて、自分解釈で使ってます。
      だからきっと「死にながら覚える」ことに特化したデザインが成功していれば、それもきっとレベルデザインなのでしょう。デスレベルデザインか。

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