その5:システムもリメイク

今回はメニューを始めとしたシステム部分のリメイクのお話をしましょう。

ゲーム部分は「レトロ風ゲームを最近のゲーム風に」でリメイクしていきましたが、システムの場合はもっと大きな問題があります。それはもちろん、コントローラーが違うってことですね。
オリジナル版はレトロパソコンがそうであったようにキーボードでの操作を前提にした物でした。キーボードなので使えるキーは盛りだくさん。思いついた機能は何かのキーを割り当ててしまえばいいやぐらいに、元にしたゲームのキーボード操作に近い物になってました。
各メニューはファンクションキーのF2がアイテムメニュー、F3がソフトメニューって感じで直接呼び出し、時のランプを使うのもReturnキーなんて専用キーを割り当てられてましたし、マントラの打ち込みなんて直接キーボードで入力でした。

しかしコントローラーを標準とするならこのままでは無理です。しかも、Wiiでは標準であるWiiリモコン横持ちでも遊べるようにしなければならなかったんです。LA-MULANAの基本ボタン操作はジャンプ、メインウェポン、サブウェポン。そしてWiiリモコンの右手側にあるのは1ボタンと2ボタン……。まるで話になりません。
正直言えば「クラシックコントローラーでやればええやんけ」な気分なんですが、Wii版を作り始めた頃はクラシックコントローラーを持ってる人は少ないという意見が多かったんだな。
一番外側の2ボタンはジャンプ……これはもう、国内スタンダードになってしまっているのでどうしようもないっ! ヒゲのおっさんの操作に逆らうわけにもいくまいよ。残りの1ボタンは当然メインウェポンになる。じゃあサブはどうするか……。上キー+1ボタン?どこの悪魔城やねん。まずかろう。
そんなわけでWiiリモコンを横持ちしてあれこれ考えつつ、一番無難なのが左手側裏にあるBボタンとあいなったわけです。しかしこのボタンもまぁ十字キーの裏にあるわけだから操作しながらの連射には向かない。「やり続けても慣れなければ変えよう」と決めて実装しましたが、やってるうちに慣れるもんですな。

オリジナル版ではサブウェポン扱いだったハンディスキャナを別ボタンで操作するのは最初に決めてました。オリジナル版の面倒な所で、石碑を読もうとするたびにメニューを開いてスキャナに持ち替えなければならなかったというのが目についていたので。古文書を読み解くことが中心になるゲームでこれは無かろうってことでアイテム使用ボタン、すなわちボタン操作によって使用するアイテムを作ろうと決めたわけです。
これが決まれば、流石にスキャナ専用ボタンってのはなかろうってことになり、前のページでも触れた「仕掛けを自分の手で動かす」というコンセプトにそって「壁にはめ込んだりかざしたりした方が盛り上がりそうなアイテム」を選別して使用アイテムと言う形にしました。そうなるとまたスキャナと切替が面倒になるのでは?と思われるかもしれませんが、サブウェポンほど頻繁に切り替える物ではないので問題なかろうと言う判断です。

さ。ここまでは操作部分のはなし。この提案した操作方法を元にしてシステムもリメイクしていきます。
dialog
これは初期段階のアイテムダイアログ企画案画像です。ダイアログ云々よりも、ステータス表示がかなり違いますね。もちろんこれは速い段階でボツになりました。なんせ画面の解像度が変わっちゃったからね。

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ボタン操作と同時に、ゲームオブジェクトと同様「こんな感じに動くといいな」イメージを作ります。

hollygrailオリジナル版ではキーボードの数字キーを直接押すことで対応する番号のフィールドに飛んでいた聖杯の機能ですが、これまた裏フィールドに飛ぶにはソフトをガチャガチャ入れ替えたりしなければならないめんどくささがありました。しかもキーボードじゃなくてコントローラー操作にしなければならない。
実はコイツはあっさりこの形に決まりました。聖剣伝説2だったかな? ゲームはやったこと無いんだけどテレビCMで「リングコマァンドォ!」とか言ってたのが記憶にあって、「リングコマンドというのはきっと素敵な物なのだ」と心に植え付けられて育った物だから、たくさんの物をコントローラーで選ばせるならリングコマンドだな!って感じでね。ボタンの数も数無いので、ポーズを押してから呼び出すってのもわりかし早く決めてたかな。

んじゃメニュー部分を見ていきましょうか。
item
まだ素材が出来上がっていない頃の企画用画像ですね。博士の立ち姿を入れて装備によってグラフィックが変わると言うのは、これはもう、何が何でも、LA-MULANAを作る以上は絶対に外せない物でした。意味はわかるな? なのでアイテムメニューはまず博士の立ち姿ありき。
この段階でフル装備になると主人公がどんどん変態コスプレ野郎になっていくことは理解しておりました。でもこの仕様にするための原因であるアイテムの為には外すことは出来ない。意味はわかるな?
この画像だけ見ても、初期企画では聖杯が使用アイテム候補だったこと、まきびしやチャクラムはまだ考えられていなかったこと、フィールドごとの地図を持っているかが表示される予定だったことがわかりますな。パソコンの画面枠が製品版の方がぶっといのは、アナログテレビの安全表示領域を考慮した結果です。
デザイナーとしてアイテムが奇麗に並ぶのが絶対条件でもあり、「このアイテムは使用アイテムにした方がいいんじゃないの?」という意見が出ても、「それなら並びを崩さないためにどれかを外す(この流れで聖杯を外したかな?)」「1個増やすなら4個増やして並びを奇麗に」とかやってるうちにこのレイアウトでは収まりが悪くなってきて今のアイテムメニューのレイアウトになったような記憶があります。

アイテムメニューが決まれば、ソフトメニューやコンフィグメニューは同じようなフォーマットを使って統一感を出します。
ソフトメニューと言えばこれもオリジナル版からは大きく変わった部分ですね。オリジナル版ではソフトは2つしか装備できませんでした。なので効果を切り替えるたびにソフトメニューで切り替え、セーブするのに切り替え、古文書読むのに切り替え……って感じでLA-MULANAをめんどくさくしている筆頭部分だったんです。
しかしこのソフトを集めるという要素は結構よいシステムだとは思っていたので、ならば複数同時に組み合わせ出来るように。無尽蔵に組み合わせたら面白くないので制限内なら自由に組み合わせられるように。パソコンソフトで制限というと……メモリかなぁって感じで決めていきました。最初はディスクにインストールするからハードディスク容量って設定だったんだけど、「つーことは外す=アンインストールか?」とか「だったら長老メールソフトはもらったらすぐに装備されてないとおかしくね?」みたいな細かい設定を全員がまじめに話してましたな。肝心の俺は「なんでもええやんけ」と思ってました。

んで、ソフトメニューを大幅にリメイクしつつ、さらにそれを利用した機能がなければならないと考えてました。キードード入力だったマントラ、セーブ係をクビにした長老の扱いなどなど。あふれてしまった必須機能と、メニュー自体がパソコンのOSであるっていうのをうまく活かして遊べないかと。そして「メニュー機能を増やす特殊ソフト」ってのを考え出したってわけです。
app
仮に作った画像のくせに、すでにメールの内容が製品版のノリと同じです。ブレませんな、こういうところは。

記事が随分長くなってきたのでそろそろ隠し球、ボツになったメニュー案を晒していきましょう。
filer1photo1
名前が違いますが文章右衛門の初期案。記録した画面と石碑をマークするっていう案だったんですが、「Wiiで画面のスナップショットを保存させるほどのメモリは無い」ってことでメールソフトを流用した今の形になっています。メッセージを保存できるのはこのゲームではかなり便利な機能になると考えてたんですが、「どこで記録したか」は絶対忘れると思ったんですよね。だから仕様が変わっても文字で記録した場所が出るようにしてもらいました。後々語り部や店の会話も記録できるようにしいてもらっていき、会話した人の名前が入るのも追加してもらった機能です。それを悪用して名前で悪ふざけしたのはモチロン俺です。
右の画像はボツになり、機能を変えて「撮るdeヨムヨム」として実装された、スクリーンショット保存ソフトです。
文章記録と同様の理由でボツになりました。このスクリーンショットをSDカードに保存できれば攻略サイトに画像つけてくれる人も増えるんじゃね?ってのが狙いだったんですが、その仕組みを作るのも面倒なのでボツに。

photo3
そしてこれが撮るdeヨムヨム。メニューの中では唯一画面が暗くなるので、この時だけパソコン画面をアホ面で覗き込んでいる博士が写り込むと言うネタでした。考え出した当時は「博士をポリゴンモデルで作ってでも実装!」と息巻いていましたが、早々に画像領域を縮めなければならないってことでボツ。まぁどーしようもなくどーでもいい機能だからね。そりゃ真っ先にボツになります。

そして最後におまけ。
ソフトシステムを大幅に変えたことで、便利な機能が何でもかんでも利用できるとバランスが取りにくくなるという心配がありました。つまり、必須な機能は使用メモリを少なくし、博士の強化機能は何個も併用できないように各ソフトの使用メモリを考えなければならなかったんです。
最初はノートに書いて計算機であれこれ組み合わせバランスを考えてたんですが、面倒くさくなってFlashでソフト起動シミュレーター作ってしまえ!と思ってこんなの作りました。
[swf]http://nigoro.jp/ja/wp-content/uploads/2012/03/romsystem.swf,600,400[/swf]
これを使って組み合わせバランスを考えつつ、各ソフトのメモリ量を決めてやろう!ってね。しかし結局ここで仮決めした数値のまんまで決定してしまったような。

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