ささ、仕様作りの続きですね。
その3で説明したのはLA-MULANAの謎解き、仕掛けの部分ですね。謎解きはLA-MULANAの柱の一つ。もう一つはアクションゲームだということ。
敵キャラをこんな感じでいこうと決めるのも大事ですが、ゲーム全体のプレイ感を考えないといけません。早いうちに細部までの仕様を出したのは、これを出さないとプログラマが作業を開始できないからです。ディレクター兼グラフィッカーは俺一人。プログラマは2人。メインシステムとオブジェクトという感じで担当を分けております。つまり、俺一人でこのプラグラマ2人に同時に指示を出せないといかんのですよ。システムの仕様が出来ていてもオブジェクトの仕様が出来てなかったらプログラマ1人が作業できないまま待ちになってしまいますんでね。それと同時期にNICALiSの方から「翻訳を早めに進めたいから全テキストを出してくれ」なんてことも言われてました。ゲーム全体に大幅リニューアルがほどこされるわけだから、当然石碑や会話文にも手が入ります。まだろくに動く物もない段階で全ての謎や仕掛けを先行して考えてヒントになる文章を全部考える作業も同時進行……。ゲームのディレクターってみんなこんなことしてんだろうか!
まずはゲーム感の話から。オリジナル版は「レトロゲーム模してるんだから不親切バンザイ!」でやってたので、気分的にはそのままいきたい所ですが、お子様から家族まで楽しむWiiですよ。ここは少し大人になって、遊びやすさやユーザーインターフェースなども今風にしなきゃね。
オリジナル版ではセーブが地上の長老のテントのみ。ロードからの再開も全て地上から。流石にこれはいかんわなぁ〜ってことで、ゲーム中最大の役割であるセーブ係を長老からとりあげる。アイテムに「テント」があって、持ち運んでセーブ地点を自分で移動できるなんて案もあったんだけどね。あれこれ会議して決まったのが聖杯石碑をセーブ地点に。聖杯石碑なら各フィールドに必ずあるので、新たにマップ構造考え直さなくてもよかったんで。
この段階でコンティニュー、クイックセーブも考え出されました。トライ&エラーが中心になるゲームなので、難易度を下げて簡単に!というのはしたくないですが、まぁそれならせめて再トライをやりやすいように。これだけですでにオリジナル版とはゲーム感が変わっちゃうんですよね。オリジナル版の「セーブポイントが固定」だと、「失敗しないように目的地までのルートを慎重に確保する」ってプレイになりますが、聖杯石碑でセーブ、コンティニューとなると、「とにかく聖杯石碑にゴリ押しでもいいからたどり着く」のが重要になりますからな。ここまでプレイ感が変わると、ポイントからポイントへの間にある仕掛けや敵なんかをオリジナル版のままには出来ません。求められるアクションが変わっちゃうんだもの。
つーことで、聖杯石碑からルームガーダー、ガーディアンへのルートの確保(再トライにあたって面倒くさいと思われない距離)はオリジナル版の段階で結構練り込んでた。リメイク版で重要なのは「手軽にリトライできる分、重要なポイント間に適度な難所がないと単調になる」ってことです。
オリジナル版でもうひとつ、用意されていたのにあまり意味がなかった物があります。それは店。
もともとオリジナル版に店をつけたのは、ガリウスの迷宮にも店があったから。重要アイテムを売っている店もあるのでまったくのムダってものではないんだけども、重要アイテムが売ってない店(無限回廊の店とかさ)はホントに利用されることがなかったというかね。せっかくあるのだから、というか店をゲームの面白さに直結させるにはどうするべか?と軽く考えた所、消耗品の入手に店を使うように出来ないかということ。いやいや、もともと消耗品ぐらいしか置いてない店がほとんどなんだけども。オリジナル版では敵や壷から結構ぽんぽん落ちてたオモリやサブウェポンをほとんど出さないようにしてみました。財宝宝箱なんかも合わせて、お金だけは割と手に入るようにして、どこで消耗品を入手するかをプランしてもらいたいって感じに。
まぁ地上に温泉を置いてしまったために、だいたいオモリはネブル姉さんの店でみんな買ってるのかな。それもまたプランかね。
オモリはしょうがないとして、どこのフィールドで、どこの店でどのサブウェポンを買いあさるか。奥の方のフィールドに行くにしたがって値上がりしてたりするんだけど、余計な真似だったかしら。いや、サブ補充を怠ってガーディアンの前で調達しようかと思ったら割高な店でチキショー!っていうドラマはどこかのWiiの中で行われたはずや。
このオリジナル版とは違うバランス調整はカケでしたね。理屈では面白くなるはずだと思ってましたが、こればっかりは出来上がって遊んでみないと。もちろん、入手できるお金や店の配置、消耗品の値段などは何度も何度も調整した。サブウェポンの仕様や威力が変わるたびに全体を調整。テストプレーヤーの意見を聞きながら調整調整。それでも最後まで「楽しさの邪魔になるようなら消耗品落とすように変更します」といいながらやってた記憶が。
LA-MULANAを出してからなのか、どーも俺は「プレーヤーを殺すことが生き甲斐の鬼畜ゲームクリエーター」のような扱いを受けているが、ここまで店の消耗品に気を使っているんですよ。
こんな感じで全体を通して、タダでさえクリアするまでが異常なボリュームのあるゲームなわけで、さらに一度完成した物を再調整できる機会を与えられたのだから。ダレることなく長く遊んでもらえるようにしなければね。オリジナル版から考えてこれだけの長期間練ることができるわけだからハンパなことは許されません。1つ1つ全ての要素を説明は出来ないですが、大体がこんな感じで全体を通してのプレイ感を出すために仕様を決めて、その通りになるように調整を続けるって感じで作り込みました。
最後に、消耗品の補充と言う単純作業になりがちな店に変化を付けるための工夫として店員のキャラやアニメなんかは早いうちから凝れるだけ凝ろうと決めてたんですが、その仕様を出すために用意した指示用画像を発掘したのでごらんあれ。
これはとにかく指示を出さなきゃと、「俺、ちゃんとやってるよ!」のアピールのために無理矢理用意したものでしょうね。
でもこれを元に、
この絵まで持って来れるんですよ。何事も足がかりがあれば先に進むのです。白紙からは先に進まないのよー。
ちなみに開発初期はこんなフォントを使ってました。映画の字幕フォント。このフォントが欲しくてゲーム開発用フォント使用契約を買ったのに、「読みにくい」という理由で今のフォントに変更したという。
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