その11:地上

やっとフィールドごとの解説に着手できましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

遺跡の中の解説をしたい所ですが、まぁそこは慌てずに地上から。
このフィールド解説なんですが、かつてのアマチュア時代にこれと同じことをやってるんですよね。今入手するのは難しいかもしれませんが……ていうかこのサイトからかつてのサイトが丸ごと落とせたりするけどもー。興味ある人はオリジナル版の時の開発秘話を。と、こういうものがあるのでここでの解説は「いかにリメイクされたか」を中心に解説していきます。

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地上ですが、いわずもがな遺跡ではありません。外。
これが結構クセモノでして、LA-MULANAの遺跡じゃない部分なんて全体の1割にも満たないんですが、ゲーム開始時に目に飛び込んでくるのはこの地上です。そしてこの1割にも満たない物のために遺跡ではない表現方法を確立しないといかんわけです。しかも開発初期のうちにね。データを覗かないとわからないレベルなんですが、遺跡内のどのフィールドよりもマップのレイヤーをふんだんに使っております。

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レイヤーというのは、Photoshopなんかで使われるものと同じ感覚。えー、わかりやすく言いますと、レイヤー1に岩、レイヤー2に草、レイヤー3に装飾用の草や花……みたいにマップの絵面を作るために重ねて表現しているものの名前です。
LA-MULANAのマップは壁レイヤーと背景レイヤーが基本で、壁と背景の間にプレイヤーや飛行しない敵が表示されてます。だから石碑やハシゴはキャラクターの下に表示されるし、壁や水は手前に表示されるわけです。そのレイヤーの中にもさっき解説したように何枚もレイヤー分けがされています。これは単に絵描きとしての注文、壁を描くにしてもマップパーツや装飾の重ねあわせ次第で効率よくマップ作成が出来るようにするためのもので、ゲーム的にはあまり関係ない部分です。
さらに、レイヤーごとに加算・減算を選べたり、部屋のサイズよりレイヤーサイズを大きくしたり小さくしたりすることでスクロール速度を変えて多重スクロールを作れたりするわけですが、地上マップだけこの多重スクロールがぶっちぎりで多いんです。壁、背景、木、奥の木、石像、隙間から光が漏れる木ども、その奥の木、さらに奥の木、遠くに見える塔とか、空ぐらいにレイヤー分けされてます。こんな複雑な構造になってるのは他には太陽神殿のピラミッドの背景ぐらいです。
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しかも遺跡の中と違ってレンガ組みでもない、自然物の岩。パターンが作りにくい。しかたが無いのでループしてつなげられるパーツを作り、たまに反転したりずらしたりしつつ、つながりに矛盾が出来た部分につなぎ目隠しパーツを重ね、まだ残ってるつなぎ目のアラを隠すためにさらにレイヤーを重ねて……もうメチャクチャ。
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レトロゲームのグラフィックのセンスを計る基準として「岩場の処理」には子供の頃から注目しておりました。
少ないパターン数でいかに自然な岩場を描いているか。中には点々でぐちゃぐちゃ描いてごまかしてるゲーム、割り切ってブロックみたいに表現してるゲーム、ほほう、パターン少ないのに四角い枠を感じませんな!ぐらいセンスの良いゲーム。自然な岩場を描けるのがゲームのグラフィッカーの宿命だと思って生きてきました。ましてや昔よりはるかにマップパーツの多く使える環境でヘボい岩場など描いてはならん!という感じで頑張りつつ、面倒になりつつで今のような感じに仕上がっております。

グラフィックの話ばかりになってしまったので他のことも。
長老とか、店とか、アルゴスや滝で進行制御をする辺りはオリジナル版から変わってません。地上に限らず、攻略手順の大枠は変えてませんからね。変わった部分を何故変えたのかを中心に解説してみましょう。
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地獄聖堂を知っている人なら意味が分かる、この変更。「遺跡の謎に関わらない石像」ですわな。オリジナル版では意味の無いデザインだったものを、もっと明らかに謎に関係ないものにってことで長老の石像にしました。長老のhate値を上げただけになりましたがね。

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これは前にも軽く話しましたが、オリジナル版には地上のマップは無かったと思うんだけど。これはリメイク版はマップが謎解きに大きく関わるようになったので、マップを取得するためのチュートリアル、スキャナを買ったときのチュートリアルとしてこういう形になりました。
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大きく変わったとこと言えば、この入り口ですね。最初はオリジナル版と同じような形でマップを作り終えてたんですが、「もっと遺跡に入る前のわくわくが欲しい、一旦地下に入ってから遺跡にしてほしい」なんて意見が出て、……これ、ホントはすごくイヤだったんです。マップの改造が大変なんですよ。しかしそこは、この遺跡入り口のマップに割れ門と大壁画を置くことを思いついたので、まぁ謎解きと世界観補足に役立つように仕上げられそうだということでマップ改造しました。ここにブロックが置かれたのも、「ブロックを押すものだと思わない人がいる」って意見から長老メールと合わせてブロックのチュートリアルとして置いたものですね。
そういやここの石碑だけ古文書リーダー無しでも読めるんですよね。一応、後世になって村人が書いたって設定です。これも何のことは無い、ゲーム開始時に読めないものばかりだと問題では?という意見があってこうしたんです。よくよく考えれば「翻訳が必要な石碑とそうでない石碑がある?」という余計な混乱を増やした気もするんですが、そこは最終的に判断する俺に責任がありますわな。むーん、こういうのって作り終わって時間が経ってから気づくのよね。冷静になりきってるからさ。

ところで、リメイクするにあたって背景のオブジェクトなんかもスキャナで調べると考古学的な解説が見れたりするようにしてます。これは「スキャナで調べるのが基本」てのを徹底して伝えるために、特徴的なものを調べたら無反応!って所を無くそうという狙いからです。んで、せっかく作った仕組みなので思いつく限りメッセージを仕込んでるんですが、表立って見つかってないものもあります。見つけた人はいるのかもしれないけども、ネット上で見かけてないってことね。
温泉を調べると効能が見られるってのはPVでも見せたので有名ですが、開放される前の滝壺のゲートがある場所の背景も調べられます。

こんな具合にいろいろと細かい話はありますが、地上は少々不本意なほどチュートリアル扱いにしてあります。長老のメールが頻繁に届くんですよねー。アルゴスと羽、滝壺とか進行上の秘密はあれど、遺跡に入るための準備エリアなので、そこにもっとも神経使って調整してます。
ゲームシステムが変わったので地上にも聖杯石碑。救済手段としての役割を増すためにオリジナル版より簡単に取得できる銃、開始早々右にある壷を壊して得たお金で右のテントでスキャナが買えるように。
オリジナル版の時にちょいちょい聞いた、「遺跡に入る方法がわからずに地上でギブアップ」みたいなのも(作ってる方からするとなんでやねんと思うけども)、そうならないようにまずは長老のテントしか入れないようにしておき、右に進んでればオモリが2個ほど手に入るように調整とか。
そうそう、魂の石で体力が回復するってのをわからせるために、地上を軽くふらついてると回復するぐらいになるように敵の落とす魂の石の量も調整してたり。
とにかく地上は導入部分として親切に? まぁ俺としてはかなり親切すぎるかな?と思うぐらいにガイドとして調整したというお話でした。未だにこれがベストだったかどうか考え込んでしまうわー。

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